医師執筆「成長期に特有の踵の痛み これって何?」 対処法や予防法について解説

Contents
1踵骨骨端症(シーバー病)
・骨端症とは?
骨端症とは、成長期にみられる成長軟骨の異常の事です。
成長軟骨は他の骨や靭帯より弱く、損傷しやすい場所です。
骨の先端部分にある成長軟骨に血流障害が発生して、壊死が起こっている状態が骨端症です。
成長期は組織修復力が高い為ある程度まで症状が進むと症状が好転・治癒に至ります。
ですが適切な処置を怠ったり、症状の悪化が進んだ場合は、何らかの後遺症をもたらす場合もあるので注意が必要です。
骨端症は、成長する骨によって痛む場所と年齢に違いが生じます。
踵は小学2~5年生、10歳前後
膝は小学校高学年~中学生、10代前半
腰は高校生、10代後半
このうち、踵にジンジンする痛みをもたらすのが ”踵骨骨端症” です。
骨端症は、発生する部位によって発見者の名前が付けられています。
例えば、パンナー病=上腕、ペルテス病=大腿骨頭、ケーラー病=足 など。
踵骨骨端症は、発見・報告したアメリカの足病外科医のジェームズ・ ウォーレン・シーバーの名前から、シーバー病あるいはセーバー病とも呼ばれています。
では踵骨骨端症はどんな病気、症状なのかを見ていきましょう。
特徴としては、主に10歳前後の男児に多くみられる病気です。
女子2倍の頻度で発症が認められています。
通常は片側の足に起こる場合が多いのですが、稀に両足ともに起こる場合があります。
よく一般的には、”身長が伸びている証の成長痛だ” などと片付けられがちなのですが、身長が伸びている証ではありません。
それどころか、子供の骨にある軟骨部分に弊害が起きている疾患の可能性が高いです。
症状は、運動後に症状が出ることが多くみられます。
・ジャンプ時の痛み
・踵を押した際の痛み
・踵に軽い腫れを伴う
・くるぶし、アキレス腱にも痛み
などが主な症状で、辛い踵の痛み故に、つま先歩きを余儀なくされることもあります。
・踵骨に骨端症が起きる原因は?
発育期の子どもの弱い踵骨骨端部(踵の骨の端、アキレス腱が付着している部位)に、運動などで衝撃がかかります。
そこにアキレス腱や足底筋膜の引っぱる力が持続的に加わる事で、踵骨に血流障害が発生します。
それにより、踵骨骨端核(踵の骨の骨端軟骨より先の部分)の壊死、または骨軟骨炎を発症してしまうのです。
これが踵骨骨端症の仕組みです。
また別の理由として「回内足」が考えられます。
回内足とは、足周辺の筋肉や靭帯が弱くなり、過剰な外向きの力がかかることによって踵の骨が体の内側に向いてしまっている状態です。この状態では、足の内側のアーチが崩れてしまい、足底筋膜やアキレス腱などのバランスが悪くなり、踵の先の踵骨骨端核や、軟骨部分の骨端軟骨に負担がかかって炎症が起きて痛みが現れます。
・誘発しやすいスポーツ種目は?
主に
・ジャンプを伴う競技 バレーボール バスケットボール 等
・スパイクを履いて走る競技 サッカー、陸上競技、ラグビー、アメフト 等
などで良く見られます。
ダッシュ時、ターン時、ジャンプ時、地面やボールを蹴る際の捻る動作などの際に、足に大きな負担がかかり症状が出やすいと考えられています。
・身体的特徴 及び 誘因
偏平足や、足の裏が硬過ぎたり柔らか過ぎる人などに多く発症している症状です。
その為、ダッシュやジャンプの着地時に地面から受ける衝撃を足の裏で分散する事が出来ず、踵に強度の衝撃を伝えてしまい痛みを増大する事が多いです。
それに加えて、O脚、X脚のような膝の影響も大きいです。
そのため、片脚で立った時や着地で足部がグラグラしてしまうことがあり、このような人に発生することが多いのも特徴です。
こうした身体的特徴を持った人に、
・ストレッチ不足
・足を冷やしやすい
・度重なる足へのストレスや、急な運動量の増加、過度の負担によるオーバーユース
・クッション性の低いシューズ類、とくにスパイクなどに起因する、衝撃吸収率の低さによる足への負担
・床、グランドがそもそも硬すぎる故の、足への負担
などの条件が追加されることで、さらに発生しやすくなる要因となっていくと考えられています。
2. 踵骨骨端症を治す
踵骨骨端症の治療は、安静にすることが第一です。
休むことによって患部の炎症を取り除きます。
症状が軽いようならば2週間程度の安静で治りますが、重い場合は1~2ヶ月かかる事もあります。
炎症が悪化している場合はアイシング等を施して炎症を抑えます。
補助手段として、非ステロイド性抗炎症薬や消炎鎮痛剤の塗布や湿布等、医師から処方されたものがあれば有効に利用します。
炎症部分は冷やしますが、踵より上部、踵を引っ張るふくらはぎの筋肉である腓腹筋・ヒラメ筋は暖めたり、マッサージを適度に施すの事も良いです。
そうすることで暖められた筋肉は柔軟性を確保し、バランスの良い動きを得る助けになります。
また治療時や、日常生活時にも、
靴に入れるヒールカップやインソールの活用、
サイズをしっかり選んでフィットした靴にする、
などもも有効なケアです。
それによって、踵のクッションや足のアーチ部分の補助に繋がるので症状の改善が期待出来ます。
こうしてある程度症状が緩和されてきた、完治してきた段階で、予防も兼ねたケアも開始します。
治療法と平行して、重なる部分も多いので併せて予防法も挙げていきます。
骨端症を予防するには
・日常生活時も含めた、姿勢や動作を見直す
・回内足の場合はその矯正
・足部のバランス能力を向上させる
・運動量自体を適度に減らして、オーバーユースを防ぐ
・筋肉の緊張を緩和してやる
・運動前後のストレッチ
等を適切なタイミングで適度な量を行うことが大切です。
日頃の立ち姿や座る時の姿勢を改善をする、
入浴時は時間をかけて筋肉を暖め柔らかくしてやる、
風呂上りにマッサージを施すことで緊張状態の筋肉をリラックスさせてやる、
などの日常生活の中で習慣にして出来る事はたくさんあります。
また、全体のバランスが重要ですから、ストレッチをする際には、足指・足裏、ふくらはぎ、ふともも、股関節、骨盤、肩甲骨周り、背筋などを、時間をかけてしっかり行うようにします。
体の歪みを整えて、関節の可動域を広げ筋肉を柔らかくする事も意識しながら実施しましょう。
そして同じ運動やスポーツばかり行っていると、いつも同じ筋肉しか使いません。
週に1~2回ぐらいは、使わない筋肉を中心にトレーニングをする事も予防になります。
体全体のバランスを考えて、歪みを作らせない体作りを心がけると良いでしょう。
治ったな、もう大丈夫だなと思っても、痛みが出た場合はすぐに休むことが必要です。
焦らず、自分の体と相談しながら、少しずつ運動量を増やすように心掛けてください